“大郷自動車修理工場”ロケ地A
H自動車
10年ぶり2回目のH自動車来訪を果たした、坂井哲也役の加藤寿さん。青春時代の様々な想い出の詰まったロケ地であろう。
“大郷自動車修理工場”ロケ地探訪
レポーター◎ちゃうシンイチー

というわけで、「レッドバロン40周年記念スタッフ&キャスト座談会」開催を前に、同日、世田谷区は成城学園前駅に加藤寿ご夫妻をお迎えし、車を走らせて行って参りました、ロケ地探訪。行き先は、SSI本部の隠れ蓑となる、あの“大郷自動車工場”ロケ地です。
車を降りて見たのは、間違いなく「こち特」さんから頂いた資料の指定の住所。そして、遂にその自動車工場が眼前に…!
んん? しかし、何かが違う…。
事前に見ていた作品映像に映る、あの自動車工場とは周囲の様子がまるで違うのである。
皆さんご存知のシーンと言えば、幹線道路から工場の壁づたいにパンして広い敷地の向こうに名前を隠すように映る、あの自動車工場だったはず。しかし、ここにある自動車工場は決して大きくはない両側一車線ずつの道路から、しかも壁を隔たることなく直に建っているのだ。あれれ? 間違えたのかな…と誰もが考えた。

(文中CSは、ちゃうシンイチー)
CS:あれれ? こんな立地でしたっけ?
加藤夫人:見た感じがかなり違いますね。もっと広い道路に面しているように記憶していました。
CS:加藤さんは如何でしょうか?
加藤氏:いやぁ、全く覚えてないですねぇ。ここだったような、違ってるような…。
加藤夫人:場所が間違いないなら、外観撮影はまた違う場所で撮ってたのかしら…。(加藤氏に)全然覚えてないの?
加藤氏:いや、ホントに覚えがないんだよ(笑)。
加藤夫人:う〜ん、らしいと言うか、何と言うか…。

これでは、懐かしさ溢れるコメントの欠片も出るはずがない(笑)。しかし、事前のコンタクトではこの場所、この建物があの自動車工場ロケ地だったことは確認済みである。そこで我々がその場で出した結論は、「外観のロングショットと工場内を別々に撮っていたのではないか」と言うこと。つまり、ここは、“大郷自動車工場”内での芝居用に使用していた場所ではないか、との結論に達した。
その想定の元、再び加藤氏に聞いてみた。

CS:あの中でお芝居をされたようですが、当時の面影はありますか?
加藤氏:う〜ん、そうですね。中に入ればもっとしっかり思い出せるかも知れませんが…何となく面影があるように思います。
CS:ここには事務所や応接室的なフロアの二階がありますね。上階へ上がったことはありませんか?
加藤氏:作品内でも、撮影外でも、上階に上ることはありませんでしたね。
CS:なるほど、あの工場内だけが撮影場所だったわけですね。
加藤氏:工場内のあの階段の下辺りの様子は記憶にありますね。
CS:大郷ボスが自動車の底部に潜り込んで修理しているところに、営業マン然とした坂井隊員が声をかける…なんていうシーンが此処で撮られたわけですね。
加藤氏:そう言う意味では懐かしい場所ですね。
CS:もう40年が経つんですね…。

こんな会話を交わしながら、時折、穏やかで優しい眼差しをロケ地に向ける加藤氏の姿が印象的だった。短時間しか滞在出来なかったのが悔やまれるが、探訪者それぞれに、このロケ地に思いを馳せつつ、一行は座談会会場へと急ぐのであった。
『レッドバロン』40周年に、かの地に、坂井隊員=加藤氏に再び降り立って頂いたこと自体に大きな意義と喜びがあったと思う。
だが、このロケ地は自動車工場だけにとどまらない。この修理工場の後方には、緑の生い茂った緑道があり、ここもまたロケ地として幾度となく本編に登場するのである。
それを察知した加藤夫人が感動の声を上げられていたのも記しておきたい。ご主人扮する坂井隊員がその緑道を走るシーンを知っていれば尚更である。

SSI本部・大郷自動車修理工場ロケ地探訪記(東京世田谷区内某所 某自動車修理工場)
レポーター◎「こちら特撮情報局」morikawa_

この度、『スーパーロボット レッドバロン』ロケ地探訪記として、SSI本部である大郷自動車修理工場のロケ撮影で使用された某自動車修理工場の現地に伺った。
そのロケ地レポートを綴りたい。
実際にロケ地である工場は、東京都世田谷区某所の都道からT通りを直進、N川沿いの橋を超えたすぐ先にあった。
自分が映像の中で確認した大郷自動車修理工場は、40年も前のものであるがため、実際目にした自動車修理工場建物自体の形が既に別物となっていた。
あの特徴ある三角の棟や、入口右にあるトタン板製の倉庫も既になく、当時とはかなりイメージの違う姿ではあった。
実際40年も経過すれば、建物の老朽化も進み、新築&改築により姿を変えるのも止むを得ないではあろう。
だが建物の姿形は変わっても、あのムードは残っており、劇中でよくレーシングカーの修理を行っているシーンがあったのが、明らかにここであるといった印象を強く訴え、ただの街中の自動車修理工場でなく、レース用のチューンナップを主たるサービスとして行う工場であることを明確にしている。
ドラマの中では、ロングショットや空撮を用い、当時の建物の全景とその周辺の様子を伺えるエピソードが意外にないため、建物の正面から見た姿の印象しかなく、そんな状態で現在の姿との比較を行うため、いささか不十分な感じはしなくもない。
それから工場の建物以外に言及しておきたいのは、この建物の近くにあるN川と川に差し掛かる橋周辺もロケ地として使われていると推測する。
これは断片的なカットからの推測だが、第14話にて玩具ロボターをもって工場から去る堀大作の弟・大助たちのシーンや、第25話で大助たちを誘拐する鉄面党の団員たちのシーンで、この工場周辺と思しき場所が画面で確認できる。
実際は別の場所かもしれないとはいえ。
当時のキャストである加藤寿氏に実際ロケ地に40年振りに伺って頂いた折に、「工場内のシーンは別の場所で撮った」的な証言を頂いた。
その工場内のシーンがどこで撮られたかが気になるのだが、これは今後の検証の課題である。
当時のスタッフによる撮影記録などが入手できれば、場所を特定できるとは思うが、流石に40年、今回訪れた以外の修理工場が現在はどうなっているかの保証は致しかねない部分は承知しているだけに。
流石に画面に映った工場内の様子だけで会社名を断定することは難しい。
この日、当初は日本現代企画スタジオのあった場所への訪問も予定していたが、時間的都合もあり止むなく断念した。
現代企画のスタジオが東京都狛江市にあったことから、近郊のこの某自動車修理工場がロケ地として選ばれたと推測する。
世田谷区内や狛江周辺の自動車修理工場をしらみ潰しに探すという手段もあるが、前述のように現在もその工場が存在するかの情報も未確認である。
いささか不完全燃焼な印象もなくはないが、劇中で活躍したヒーローの秘密基地の実情を目にすることができ、作品に対する愛着や探究心が一層沸く自分であった。
そんな感じで、今回のロケ地レポートを終わりたい。
T通りから見たH自動車店舗正面。『レッドバロン』劇中では工場名が記された社屋が確認できたが、後年、店舗手前が部品販売スペースと事務所に改装されたため、正面から見るかぎり40年前の面影はない。

“大郷自動車修理工場“ロケ地レポート
レポーター◎「こちら特撮情報局」奥虹

1)きっかけは加藤寿氏のヒントだった
ことの始まりは、2004年10月24日、弊サイトが企画した『マッハバロン』放送30周年記念オフ会だった。
嵐田陽役・下塚誠氏が経営する居酒屋“レモンタイム”さんに、加藤寿氏をはじめ番組キャスト4名が集結してくださった時のこと。加藤氏との他愛のない雑談のなか、“SSI秘密基地”の設定をもつ“大郷自動車修理工場”についてふと話題が及んだ。
すると加藤氏は、事件が大団円を迎えた時の坂井哲也の笑顔よろしく、1973年当時の撮影フィルムを逆回転させるかのように、優しく懐かしそうな面持ちでこう答えてくださった。曰く「たしか場所は世田谷区内で、どこか川沿いにあった自動車修理工場だったと記憶しています」。
2007年以降『レインボーマン』関係ロケ地を40箇所近く探訪してきたものの、大郷自動車修理工場のロケ地については、「そのうち探せばいいか」と、ついつい調査を先延ばしにしてしまった。
2013年は『レッドバロン』放送40周年の節目。放置したままでは、せっかくロケ地特定のヒントをくださった大恩ある加藤寿氏に不義理をするようで、2013年春、やっと重過ぎる腰を上げた次第。
『レッドバロン』第10話、大郷自動車工場へ向かう大助たちの進路(左手前から奥へ)。40年前、H自動車さんのお隣“Y鉄工”だった場所は、マンション(1階にコンビニ)に姿を変えた。H自動車の至近距離にあったK農協も既に撤退。周辺店舗はかなり様変わりしている。
2)大人の事情
まずは国会図書館で“世田谷区および隣接する区市町村”の住宅地図(1973年度版)を精査。加藤氏のヒント「川沿いの自動車修理工場」という条件に整合する工場を丹念に拾いあげていくと、全部で16箇所あった。
次に『レッドバロン』映像内“某自動車工場”が登場するエピソードをサーチしながら観ていく。更に“某自動車工場”が映り込んでいるシーン内で確認できる、特徴的な建築物や景色などを目を皿のようにして拾い、住宅地図と照合していく。この作業が結構まどろっこしい。
第10話、大助たちが大通りの側道を歩きながら大郷自動車修理工場へ向かうシーン内に、“農協の長柱時計”がチラリと映り込んでいるのを発見。『レッドバロン』放送当時の1973年、地元・静岡の農協各支所でも頻繁に目にした、あのお馴染みの“農協の長柱時計”だ。
世田谷区住宅地図(1973年・1975年度版)を精査していくなか、K農協生活センターとK農協園芸センターから至近距離にある、K大橋沿いの“H自動車”さんに目星を付ける。ここが怪しい? 40年前、H自動車さんのある世田谷区某所ではまだ農家戸数が多かったらしく、地図でみるK農協は店舗規模がやたら大きい。
さらに同第10話では「RSH レーシングカー製作 〇〇エ自動車世田谷工場」と社屋に記された文字と、H自動車さんの現在の電話番号下4桁に合致するナンバーまで、しっかり映り込んでいる!
よって「大郷自動車修理工場ロケ地=H自動車さん」で、ほぼ確定だろう。H自動車さんは
『レッドバロン』第1・5・6・8・10・11・14話など主に第1クールに頻繁に登場しているが、確定するには実際に現地へ出向き、細部を検証しなければならない。
H自動車店舗を左斜めから見ると、奥の修理作業スペースだけは40年前と変わりないことが解る。店舗内から、今にも整備服姿の大郷キャップや健が姿を現しそうな雰囲気だ。
2013年夏・某日、H自動車さんがお持ちのメールアドレスへ事前連絡したのち、昼休み、水菓子持参で美人(本当にお綺麗!)な60歳代と思しき社長さんに簡易取材をお願いしてみる。
曰く「当時『レッドバロン』のロケで業務に支障をきたしてしまったので、それ以来、映画やテレビドラマ関係で(ロケの)オファーをいただいても全てお断りしています」との衝撃的なご発言! 当時やむにやまれぬ“大人の事情”がおありだったとはいえ、少々落ち込む。
取り敢えず、気を取り直し、現在の社屋を簡単に見学させていただく。『レッドバロン』劇中、最も頻繁に撮影された“工場正面からの煽りロングアングル”で散見された“文字つき社屋部分”は既に改築されたため、部分的には現存しない。
H自動車ほぼ正面からK大橋下流方面を望む。約100メートル下流にあるC橋は40年前の形状を留めている。
3)“ジャンカーZ”駐車中の謎
昨年11月、加藤寿氏ご夫妻とロケ地探訪に同行したスタッフ2名が、H自動車さんの工場を真正面から確認した際、「あれ? 劇中映像と違うぞ」と、著しい違和感を持ったのも無理はない。
それもそのはず、大通り(T通り)から見て、工場店舗の手前約3分の1が部品販売店舗と事務室(ともに2階部分)に改装されたため、一見しただけでは『レッドバロン』ロケで使用されたあの自動車工場だと判別するのは至難の業なのだ。
しかし工場内を仔細に観察すると、『レッドバロン』撮影時の様子(構造)と大差ない。更にT通りと交差する支道を入り、店舗側面にまわって観察すると、(後年改装された店舗の手前約3分の1を除き)工場が40年前と変わらない形状であることを知ることができた。
第5話、健・真理・大作がオープンカーとバイクで移動中するのは、前述のT通り。3人はK大橋の上で熊野警部とすれ違うが、その時、熊野の背後に映り込んでいるのがH自動車さん裏手の“雑木林”。同シーン、近影のコンクリート製橋台からわずかに覗くのは、H自動車さんの工場屋根だ。
第14話、鉄面党にすり替えられたロボターを巡る攻防戦。哲也と大作がH自動車さん裏手から支道を跨ぎ、お隣の“Y鉄工”裏の“牧草地”へ走り込むシーンがある。
40年前、H自動車さんの裏手は雑木林、お隣のY鉄工の裏手は牧草地で、2社の間には支道が通っていた。H自動車さん裏手の雑木林は、マンション・一般住宅・“世田谷区立J公園”(1988年開園)に姿を変えた。またY鉄工裏手の牧草地はその全てが、前述の“J公園”に姿を変えた。1973年の住宅地図には当該地全てに“畑”の地図記号が付き、現在J公園内の一部樹木には、1990年前後の日付の植樹プレートが付いている。
つまりH自動車さん裏手周辺の景色に関して言えば、1973年当時のそれ(雑木林・畑・牧草地)は皆無に近い。
H自動車1階の作業スペース内は、比較的40年前の面影を残している。坂井哲也役・加藤寿氏は当該箇所をご覧になり、「あの階段の下辺りの様子は記憶にあります」とコメントしてくださった。
前述のH自動車社長さんの証言を鑑みれば、『レッドバロン』撮影のある時期、H自動車さんが日本現代企画側に対し、「レーシングカー製作や自動車修理の納期に支障が出るので、(一定期間)工場での撮影には応じかねる」旨を申し出たことは、想像に難しくない。
第11話劇中、H自動車さん敷地内に『ジャンボーグA』登場の“ジャンカーZ”が後ろ向きで確認できるが、おそらくH自動車さんは当時、円谷プロ関連車輌の改造や整備も担当していたと思われる。言うまでもなく、日本現代企画メインスタッフ諸氏は円谷プロとのパイプが太いため、そもそもH自動車さんで『レッドバロン』ロケが行われた経緯は、円谷プロ・コネクション、もしくは鈴木清氏・高野宏一氏らの個人的コネクションだったと推察する。
H自動車さんのロケ使用の経緯について鈴木清氏にお訊きしてみたが、「申し訳ないけども記憶にないです」とのことだった。
ともあれ「業務に支障」というH自動車さんの“大人の事情”ゆえに、第19話、SSI基地の設定である“自動車修理工場”とは本来整合しない“モービル・ガソリンスタンド”が、モービル整備服姿の大郷キャップとともに、劇中唐突に登場することになったのではないだろうか(もっとも第19話登場のガソリンスタンドは自動車整備スペースを併設していたが)。
H自動車の裏手の景色。このアングルから工場を観察すると、店舗の修理スペースが40年前と変わらない形状であることを確認できる。
4)何故モービル・ガソリンスタンドなのか?
世田谷区住宅地図(1973年度版)を駆使し調査したところ、第19話当該ロケ地と思われる場所は、世田谷区船橋地区の環状八号線沿いにあった“モービル・ガソリンスタンド Y石油店”と判明。
第19話劇中、大作隊員の背後に映っている東京ガス所有のガスタンク風景が、現在も当該地から同一アングルで目視確認できる点。劇中、環状八号線を挟んでガソリンスタンドの真向かいに映り込んでいた麦畑が、現在もほぼ変わらない風景で果樹園になっている点。これら2点から「世田谷区船橋地区にあったY石油店は、H自動車さんの代わりに使用されたSSI基地ロケ地のひとつ」と考えて、おそらく間違いない。
しかしY石油店は、残念ながら数年前に閉店し、『レッドバロン』劇中映像の面影を何ら遺さない高層マンションに姿を変えた。リーマンショック以降、全国的にガソリンスタンドが激減したと聞くが、当該店舗閉鎖もその影響と推察される。
では第19話、H自動車さんの代わりに登場したのが、何故“モービル・ガソリンスタンド”であったのか?
『レッドバロン』第14話、ロボターを巡る攻防戦で、哲也と大作が大郷自動車工場裏手から飛び出したシーンの同一アングル。40年前この辺りは牧草地であった。
『レッドバロン』では全話を通じ、“モービル社ロゴマーク”のインサートシーンが頻繁に散見される。SSIメンバーが立ち寄ったGSで“モービル社ロゴ”が映り込んだり、SSI車輌移動シーンにモービルGS看板が映り込むのはまだ良い。第18話では、大蛇探しに出かける真理と大作の乗るSSIジープに貼付された“モービル社ロゴ”までが、“画面いっぱい”唐突にズームアップされる執拗さだ。
また、第17話では作業中の大郷と健がモービル・ロゴ入りのTシャツを着込んでいるし、第19話では大郷らがモービル・ロゴ入りの整備服を着ている。
同様のことは同じ日本テレビ系放送のバイクアクションドラマ『ワイルド7』(1972年10月〜1973年3月)、NET(現.テレビ朝日)系のヒーローアクションドラマ『電撃!! ストラダ5』(1974年4月5日〜1974年6月28日)でも顕著だった。
これはあくまで推測に過ぎないが、『ワイルド7』『レッドバロン』『電撃!! ストラダ5』では、撮影で使用されるガソリン・オイル・消耗部品類などが、モービル社によって“条件付き提供”されていたのではないだろうか? その対価として“番組内でモービル社ロゴのインサートシーンを放映する取り決め”が、宣弘社・日本現代企画・モービル社間で存在していたのではないだろうか? だとすれば妙に合点がいくが、もしそうであるならば、これも所謂“大人の事情”なのだろう。
この点について鈴木清氏に伺ったところ、以下のとおり語ってくださった。
「モービルは(番組で“提供”と表記される)正式な番組スポンサーではなかったです。あれは“タイアップ屋さん”の持ち込み企画で、モービルの“ロゴ”を作品中に映すことで、製作費の一部をカバーしてもらうやり方だった。当時、ガソリンなどを提供してもらう形のフォローだったか、現金でフォローしてもらう形だったかは記憶にありませんが、モービルは言うなれば“裏スポンサー”のような立場でお世話になりました」。
H自動車さん裏手にあった雑木林と、お隣のY鉄工裏手にあった牧草地は、ともに“世田谷区J公園”(1988年開園)に姿を変えた。アスファルト道路の突き当たり付近にはT通りとH自動車店舗がある。
5)三つの自動車修理工場
話を戻そう。第15話、殺人容疑で逃走中の紅健の足取りを追う熊野警部が、自動車修理中の大郷キャップを訪ねるシーン。および第17話冒頭、自動車整備作業中、しきりに休暇を欲しがる紅健の要求を大郷が突っぱねるシーン。“当該自動車工場”の向かい側にある“〇〇〇大倉庫(?)”と判読できる建築物、および周辺景色からも明らかだが、“第15・17話に登場する自動車工場”は、H自動車さんでもY石油店でもない。
現在、場所を鋭意検証中だが、鈴木清氏ら日本現代企画スタッフとパイプの太い円谷プロは、比較的世田谷区内の自動車工場でロケを行う事例が多い。第15・17話はともに鈴木清監督演出回であるから、円谷プロ・コネクション関連の自動車整備工場が、H自動車さんに代わるロケ地として、第15・17話のみ暫定使用された可能性が考えられる。この点を鈴木清氏に伺ってみたが、残念ながら「(第15・17話の自動車工場の)場所も経緯も覚えていません」とのことだった。
H自動車さんのご都合で同所撮影が不可能になったスタッフは、当時、世田谷区船橋地区にあった“モービル・ガソリンスタンド Y石油店”を新たなロケ地とした。画像は跡地に建設されたマンション。
今回の取材を通じ、『レッドバロン』ロケの過密スケジュールによって、本来の業務に支障が生じたH自動車さんのご事情に鑑み、少なくとも3箇所のロケ地が“SSI秘密基地”(大郷自動車修理工場)として撮影されている事実が判明した。
しかし「“SSI”は世界中に支部があり、極東支部は(表向き自動車修理工場経営者である)大郷実キャップの指揮下にある」という基本設定に照らし合わせれば、SSIが作戦に応じ、日本国内に点在する複数のアジト(自動車工場)を移動しながら戦う事態は大いにあり得る。よって“ロケ地変更”は、製作スタッフ諸氏の叡智の範疇であり、『レッドバロン』の世界観から逸脱することには繋がっていない。
『レッドバロン』第19話劇中に登場したY石油店からは、街路樹を挟み東京ガスのガスタンクが確認できた。画像は第19話、大作の背後の景色と同一アングル。
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