“持越鉱山 持越鉱業所”跡
『レッドバロン』第9話劇中、ワンカットのみ挿入された、赤い屋根が連なる“全泥青化精錬所”。経営母体である“中外鉱業”が、現在は廃棄電気製品から金・銀をリサイクルする事業を展開しているため、精錬所跡と薬品タンクが並ぶミスマッチな風景が見られる。
“持越鉱山 持越鉱業所”跡レポート
レポーター◎「こちら特撮情報局」奥虹

『レッドバロン』第9話、鉄面党のウラン鉱へ単身潜入した熊野警部だったが、“森田”の名札を付けた鉱山作業員9人(メカロボ)に包囲され大ピンチ。一方、熊野の後を追うSSIメンバーの前に、突如敵ロボット・ベスビオスY(OPと劇中表記では“ベスビオス”)が出現、アイアンホーク号を攻撃したため、健もレッドバロンで迎撃する。しかし頭部と右手から強力な破壊光線を発射するベスビオスYは思いのほか強敵で、バロンは土砂に埋まり身動きが取れない…。
前回“湯ヶ島坑”を探訪した際に、そこから西方向へ約5キロメートル奥へ入る“持越鉱山 持越鉱業所”は、時間的制約から撮影ができなかった。そのため、後日スケジュールを調整して探訪・考察した(なお、同所の現状につきましてご助言を賜りました、遺構研究サイト「下田街道」管理人様には心よりお礼を申し上げます)。
中央に見える“全泥青化精錬所”跡。その山腹には、劇中哲也と大作が鉱山上部へ移動するため利用したインクライン(貨物用ケーブルカー)があった筈だ(現在はインクラインを含め、関連設備は雨ざらしの遺構になっているという)。
1914(大正3)年、老舗旅館“落合楼”主・足立三敏氏により本坑露道が発見された同所は、1925年に日本鉱業日立鉱山に売却され、さらに1932年、中外鉱山に買収された。1934年に操業を開始、1936年に3社を吸収合併し規模を拡大(ピーク時1936年の産出鉱は11万4千トン、金産出量560キログラム、在籍人数ピークは同年の1,045人)。
その後1980年代後半に全鉱山で採掘を休止し、現在は主に廃棄電気製品から金・銀をリサイクルする事業を展開している。中外鉱業の沿革に「1973年5月、持越鉱業所に金銀回収設備を設置、精金事業を開始」とあることから、『レッドバロン』撮影当時(1973年6月中〜下旬)、“持越鉱山 持越鉱業所”は金の採掘休止直後で、(約10年後に休山になる)“上国鉱業所 清越鉱山”から採掘された金・銀を精製するポジションに再編されたばかりだったと推察される。
右に見えるのは、金・銀リサイクル(精製)のためのプラントであろうか。『レッドバロン』第9話、“持越鉱山 持越鉱業所”で行われた撮影の殆どは、この画像の左に広がる敷地だ。
劇中ワンカットだけ挿入された“赤い屋根が連なる精錬所”全景は、1950年に再建設された“全泥青化精錬所”(1961年に再拡張)。もともと旧精錬所は1933年に建設され、一日当り150トンの処理量を誇っていたが、戦後、規模拡大に伴い新精錬所が必要とされたため、建設されたと思われる。
地元図書館に、昭和30〜50年代の“持越鉱山 持越鉱業所”写真資料が残っていたので、それを基に熊野警部やSSIメンバーの動きを追ってみる。ウラン鉱に潜入した熊野が作業員(メカロボ人間態)たちに包囲された位置は、鉱業所のほぼ中央辺り(中腹にある“全泥青化精錬所”11棟の左から数えて1〜3番目辺りを下った位置)。SSIメンバーとメカロボの戦闘シーンは、鉱業所内の作業所と社宅(中腹にある“全泥青化精錬所”11棟の左隅から更に左に寄って下った辺り)で撮影されたと思われる。外壁越しに見ただけでは詳細に考察できないが、現在、中腹に残る“全泥青化精錬所”の一部と、外壁付近にある何棟かの赤い屋根の倉庫と思しき建物以外は、撮影当時の風景を遺してはいないようだ。
近影の赤い屋根の倉庫(?)の後方に、“全泥青化精錬所”跡の一部が確認できる。撮影当時11棟で構成されていた精錬所だが、画像を見るかぎりうち4棟は解体され、現存するのは7棟だけのようだ。
“持越鉱山 持越鉱業所”でメカロボに急襲されたSSIメンバーは各自得意技で応戦。(柔道経験者の大下哲矢氏らしい)大郷ボスのダイナミックな投げ技。ジープの上で細々動く真理はボクシングの“ジャブ”を髣髴させるトリッキーな小技。大作は梯子を用いて力技とコミカルな動きをミックスした殺陣。そして(若駒冒険グループ諸氏と息の合った加藤寿氏演じる)哲也は、キレのあるアクロバティックなアクションを披露している。バロン座談会でも語られていたが、SSIメンバー各キャラクターの個性を反映させた、高倉英二氏の計算された殺陣が、本第9話でも堪能できる。
哲也と大作はインクライン(貨物用ケーブルカー)で鉱山上部へ移動し、“湯ヶ島坑”と記されたトンネルを潜る。これも“編集のマジック”で、実際はインクライン(貨物用ケーブルカー)に乗る前のロケ地は“持越鉱山 持越鉱業所”、上り切って降車した後のロケ地はここから5キロメートルも離れた“湯ヶ島坑”。福原博監督は違和感のないフィルム編集で2つのロケ地を繋げている。
赤い屋根の倉庫(?)と薬品タンクの隙間から、“全泥青化精錬所”跡が見える。熊野と作業員(メカロボ人間態)たちの絡み、SSIメンバーとメカロボの戦闘シーンは、ともにこの付近で撮影されたと思われる。
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