中田島砂丘
中田島砂丘の入口。南北約0.6キロメートル、東西約4キロメートルと広範な砂丘だが、入口と隣接する“遠州灘海浜公園”などがロケ隊車輌の駐車スペースになる利便性から、およそこの入口からほど近い位置の砂丘が撮影に使われることが多いようだ
中田島砂丘の入口から程近い、松林内の林道。劇中熊野警部が、SSIジープで鉄面党ジープを追跡する大作を発見したのはこの周辺だと思われる。実際はアングル的に林道から砂丘内を見渡すことは難しい。前提として、熊野警部役・玉川伊佐男氏の好演があってこそ、当該シーンは繋がったのだろう。
“中田島砂丘”レポート
レポーター◎「こちら特撮情報局」奥虹

『レッドバロン』第25・26話、拉致した大助たちを乗せ逃げる鉄面党ジープ、追う大作のSSIジープは、中田島砂丘周辺を爆走。松林を通りかかった熊野警部は、大作のジープを発見し追いかけるが自転車では到底追いつけない。砂でスリップした鉄面党ジープに追いつき反撃する大作だが、メカロボに包囲され大ピンチ。そこへ熊野が追いつき、大助たちを保護する。
砂丘内に入ってきた2台のジープの進路は、おそらく現在の“中田島砂丘”入口付近から西方向へ進んだ砂防林の辺り。逃げるメカロボたちを追う大作は、そこから走って海岸方向へ進む。メカロボを見失って駆け出す大作の目線で、キャメラは南東方向の松林のない砂丘を映す。鉄面党の罠に陥り、大作が砂中に引き摺り込まれたことを知らない熊野や大助は、海風が砂を運ぶの音のなか、大作の名を連呼するほか術はなかった。
レッドバロン(アルミニウム合金製のイミテーション)から脱出した健は、SSI浜松秘密基地で大郷や矢沢博士と合流した。無傷の健とバロンを見て驚く熊野や大助たち。大郷の言う“シャドウ作戦”とは、二重構造の地下工場格納庫の特性、および2体(ニューバロニウム製・アルミニウム合金製)のレッドバロンすり替えにより、敵をトリックで翻弄、強化のための時間を稼ぐ…というものだった。
しかし依然、中田島砂丘で行方不明中の大作は、ブレスレット内に“7つの補強策の秘密”を持ったままだ。もしもそれが鉄面党に渡ってしまったらバロンの強化作業も水泡に帰す。健を基地に残し、大郷たちは大作が消えた中田島砂丘へと急ぐ。
入口から数十メートル進み、東方向を望む。特撮ファンには潮健児氏演じる地獄大使の最終エピソード、『仮面ライダー』(第79話)のロケ地としても有名な中田島砂丘だが、枚挙に暇がないほど多くの映画・テレビドラマのロケ地として活用されている。白い砂と青空の対比が映える名ロケ地のひとつと言えるだろう。
その頃、鉄面党海底基地では、捕われていた大作が“7つの補強策の秘密”を隠したブレスレットをデビラーに奪われていた。キングデビラーのヘッドギロチンにより首を飛ばされたバロンの映像を大作に見せ、勝ち誇るデビラー。SSI隊員としてせめて一矢を報いようと、もがく大作だが、デビラーに顔を焼かれてしまう。
部下から“シャドウ作戦”の事実を聞かされたデビラーは激昂。砂丘に秘密の通路があることを何としても仲間たちに知らせたい大作は、敢えてデビラーを挑発する言動をとるが、その結果、体内に時限爆弾を埋め込まれ“人間爆弾”に改造されてしまう。
砂丘で大作を探す熊野たちの前に、腕に包帯を巻いた大作が突如現れた。SSIメンバー・熊野・大助は、中田島砂丘入口方面から海岸方面へ向かって走り、大作はその反対から走り寄る。位置的には第25話で、メカロボVS大作・熊野の戦闘シーンが撮影された位置と、それほど離れてはいない(後方の松林の形状が同じ)。
デビラーは大作に「紅健と大郷を巻き込め」と命令していた。時限爆弾に改造された右腕を無言で大郷の前に差し出す大作。大郷は全てを察し、もはや大作を生きて救出することは不可能であると覚った。大作の無事を知り、遠くから駆けて来る健。方向としてはおそらく南東からだろう。
大作はブレスレットを鉄面党に奪われた失策を大郷に詫び、それをデビラー総統が右腕に着けていること、この先に敵の海底基地に続く秘密通路があることを告げる。「みんな、元気で! 大助、大きくなれよな。鉄面党を憎め。そして戦うんだ!」。泣き叫ぶ大助や、成す術もなく苦悩の表情を浮かべるSSIメンバーに微笑みながら、大作は炎に包まれ四散した…。
入口から数十メートル進み、南方向を望む。海岸線まだはまだまだ遠い。しかし波によって浸食される砂量、および天竜川(ダムの竣工以降)上流から運ばれてくる砂量のバランスが崩れ、海岸線は毎年平均5メートルも後退し続けているという。
再び現れたキングデビラーを駆逐するため、健はバロンに搭乗。大郷・哲也・真理も、鉄面党の海底秘密基地を破壊するため、行動を開始した。
バロンはキングデビラーの分銅攻撃とバットフェザーに苦戦。またSSIも砂丘の中から現れたメカロボたちに苦戦するが、とうとう秘密通路の入口を発見、時限爆弾を仕掛けるため潜入する。タイマーは残り時間(30分)を刻一刻と刻むが、メカロボ包囲網は厚く3人は脱出できない。しかも大郷はデビラーが腕に着けているブレスレットを奪い返す算段でいる。その危険な任務を志願する哲也・真理を戒め、直ちに脱出するよう命令を下す大郷。時限爆弾の爆破時刻を予定より早め、敵を撹乱することに成功した大郷は哲也・真理を逃がす。
大郷・哲也・真理が鉄面党海底基地につながるハッチから潜入を試みるシーンだが、残念ながらここを中田島砂丘と特定するには至らない。ハッチの周辺植物は砂丘で生息するコウボウムギのようにも見えるのだが…。
入口から約200メートル進み、北方向を望む。ジープの対決シーンはこの辺りか? 砂丘の一部には“コウボウムギ”という海浜植物が繁茂している。劇中、鉄面党海底基地へ続く入口ハッチ周辺にも、このコウボウムギと思しき植物があったが、当該シーンが中田島砂丘の撮影かどうかは判断が難しい。
デビラーのいる司令室へ辿り着いた大郷は、拳銃を突きつけブレスレットの奪還を図るが、一瞬の隙を突かれ、右手と額を焼かれる。大郷はカウンターでデビラーの腹部を撃ち抜くも、「海底基地を破壊されても我々には宇宙基地がある」と、デビラーは嘯く。
デビラーの最期を看取った大郷だが、誤って飛行艇の起動スイッチに肘を突いてしまった。大音響とともに爆破を起こす鉄面党海底基地から、デビラーの遺骸と大郷を乗せた飛行艇が海面から飛び出す。デビラーの正体がサイボーグであることを知った大郷は、「大作、ブレスレットは取り戻したぞ」と感極まるが、悲劇はすぐそこに迫っていた。
キングデビラーの設計図を見つけた大郷は、敵ロボの弱点が「腹部に内蔵されている自動コントロール装置」であることを健に告げる。大郷と矢沢博士の助言で、ドリルアローを発射したバロンは、強敵キングデビラーの腹部を攻撃、敵は四散した。
入口から約400メートル進み、北方向を望む。一連の大作とSSIメンバーの再会シーンは、おそらくこの方角から撮影されたと推察される。位置的にはジープの対決シーン撮影ポイント近く?(背景の松林自体は形状を大きく変えないため)。「海岸線が毎年平均5メートルも後退し続けている」のであれば、『レッドバロン』撮影の1973年以降、単純計算でも海岸線が200メートル以上浸食されたことになる。
健の呼びかけに目を醒ました大郷は、外界の異様な風景に息を呑む。外は宇宙空間。デビラーの司令室はそのまま宇宙船になっており、火星基地へ自動回収されようとしていた。2クール26話にわたり、デビラーの司令室ロケが“よみうりランド 海水水族館”で行われてきたわけだが、司令室のデビラーの背後に海洋生物が映り込む理由が、遂に本エピソードで明確になった。「司令室自体が海底でスタンバイする飛行艇だった」とは!
大郷は健・哲也・真理に「鉄面党は宇宙からやって来るが、力を合わせれば必ず勝てる。頼むぞ!」と言い残すと、自ら通信を遮断する。ブレスレットは取り戻したが、それを敵の火星基地へ運ばせるわけにはいかない。悲壮な決意とともに時限爆弾のタイマーをセットした大郷は、「さらば地球。さらばSSI」と呟きながら眼を閉じ、飛行艇とともに宇宙空間で四散した…。
健・哲也・真理・熊野は、夕陽に映る大作と大郷の面影を見つめながら、新たな敵と戦い続けることを固く誓う…。当該の美しい夕陽は砂丘にかぶるように沈んでいくので、おそらく鈴木俊継監督は、中田島砂丘の“夕陽待ち”でキャメラをスタンバイしていたと思われる。第26話のラストシーンは『レッドバロン』第1〜2クールの締めに相応しい、重厚で感動的なエンディングといえるだろう。『マッハバロン』エンディングの“多摩川の夕陽”を撮影するため、鈴木清監督も“夕陽待ち”をしたと語っていらしたが、バロンシリーズは殊に“黄昏シーン”の効果的インサートが印象的だ。
入口から約400メートル進み、南方向を望む。僅かだが海岸線が見える。画像左に見える茣蓙(ござ)のようなものは“堆砂垣”(たいさがき)。砂浜に砂が積もることを促進し、砂丘面積が減少することを防ぐ役割がある。
バロン座談会で鈴木清氏が「大郷と大作の殉職」に疑問を呈してくださったが、作り手と視聴者から愛され生きてきた名キャラクター2名を、葬らなければならなかった事実は重過ぎる。私事で恐縮だが、第25・26話の大郷と大作の殉職シーンのトラウマから、当時この回をもって『レッドバロン』の視聴を一切止めている(したがって第3クールの視聴完了は、それから32年後の2005年)。
脚本の上原正三氏は、第2話の「紅健一郎・紅健」の関係性を、「堀大作・大助」の関係性へと意図的に置換している。「鉄面党により愛する兄を爆弾人間に改造され喪失。しかも遺骸すら残らない残酷な“四散”」というシチュエーションを健と大助に共有させることで、健は大助に自分を投影、感情移入し、デビラー(とキングデビラー)への怒りを増幅させている。おそらくはそのカタルシスを第2クールから第3クールへ繋げる意図だったかも知れないが、放送当時9歳だった筆者には、如何せんハード過ぎたのだった。
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