旧多摩聖蹟記念館
記念館全景。明治天皇行幸を記念する建物として1930年に建設された。修繕・管理が行き届いているためか、リペイントされた外壁は84年の歳月の経過をそれほど感じさせない。
健・真理のアクションシーンの大半は、記念館外周の柱をつなぐプレート内外で撮影された。
“旧多摩聖蹟記念館”レポート
レポーター◎「こちら特撮情報局」奥虹

『レッドバロン』第20話、鉄面党はデビラー総統の右腕・シュンケル博士を工場長として、東京郊外の地下工場で密かにロボットを建造していた。その場所を突き止めたSSIは地下工場を急襲、熊野警部の活躍もありシュンケル博士逮捕に至る。木島科学研究所の特別拘束室にシュンケル博士を幽閉したSSIは祝杯をあげるが、同じ頃デビラーは、元エジプト軍隊ロボット・スフィンクサーを本拠地(木島科学研究所)へ送り込み、シュンケル奪回を目論んでいた。
シュンケル逮捕でご機嫌な熊野が、多摩川・五本松でシャンパンの酔いを醒まそうと寝転んでいると、突如頭上から“謎の巨大指”が落下。“巨大指”は直ちに科学研究所へ運び込まれ分析されるが、それこそデビラーの罠だった。“巨大指”の発する光線によりSSI警備網を難なく突破したシュンケルは、真理を人質に旧多摩聖蹟記念館へ移動。健はバイクでそれを追う。
シュンケル博士の自動車と健のバイクが通過した、記念館近くの道路。劇中の未舗装路は、現在アスファルトで舗装されている。右2棟の公衆トイレの左奥に記念館がある(上画像)。

左手前の木陰が、劇中健が待機していた場所。そこからは記念館ドームまで数十メートルもの距離があるうえ、ドームが死角となっているため、本来、健の待機場所からは拘束されている真理の姿は微塵も見えない(下画像)。
人質の真理を乗せたシュンケルの自動車は、旧多摩聖蹟記念館へと至る未舗装路から記念館入口近くに停車。真理はメカロボに囲まれ入口方向へ。健はそれより数十メートル後方でバイクを停車、SSI本部へ通信報告する。報告を受けた大郷ボスたちも真理救出のため、記念館へ向かう。しかし突如敵ロボ・スフィンクサーがその進路を塞ぎ、あまつさえシュンケルは、拘束される真理の姿をボディ・モニターに映し出して「お前たちはそのまま(スフィンクサーの)東京破壊を見ていればよい!」と勝ち誇る。
真理は「私の生命を救うより、バロンを出動させ東京破壊を阻止してほしい」と、大郷たちに切々と訴える。逡巡する大郷を嘲笑うかのように、スフィンクサーはビルを破壊し始める。健も真理を救うタイミングを探すが、警備が厳重なため動くに動けない。遂に苦渋の選択をした大郷は健にバロン出動を命じるが、健は「自分が必ず真理を助け出すので待ってほしい」と必死で抗弁する。
シュンケル博士の自動車が停車した位置。記念館の裏手にあたる。脹らんだ部分は、個展・展示会など多目的に利用できるギャラリーとなっている。
真理が拘束されているのは、記念館入口を囲むアーチ型プレートの中央。真理の両手首を縛るロープは、頭上にあるアーチ型プレートを一旦くぐらせて、最寄の柱に括り付けられている。
記念館ドームを時計に例えると、真理が拘束されている位置は“12時の方向”で、健が待機する木陰は“5時の方向”。実は健の待機する木陰からは、記念館ドームが死角となり、拘束されている真理の姿は微塵も見えない。
レッドバロンを出動させた健は、“5時の方向”から“6〜8時の方向”へ疾走する。そのルートは真理が拘束されている位置からドームを挟んで、まさしく“真裏”の位置だ。
真理が両手首を縛られシュンケルに拘束されていたのは、画像右辺り。記念館入口を囲むアーチ型プレートの中央。館内には建設者・田中光顕が収集した幕末・維新期の掛軸・書状などが収蔵されている。
大郷・哲也・大作が見守るなか、スフィンクサーに立ちはだかったバロンだが、健が搭乗していないため敵の空中キックに翻弄され、金槌に打たれる釘の如く、見る見る地中にめり込んでいく。一方、健・真理の鬼神のような屈強ぶりに圧倒されたシュンケルは逃亡を企てるが、熊野が傘マシンガンで止めを刺す。
健・真理とメカロボの格闘シーンは、記念館外周の柱をつなぐプレート内で撮影したものと、プレート外の砂利の敷かれたスペースで撮影したものを、細かくカット割りして編集されている。シュンケルの逃亡ルートと、健がバロンを呼びながら疾走したルートは、進行方向が正反対だが場所は同一だ。
スフィンクサーの空中キックで肩まで地中にめり込んだバロン。バイクで駆けつけた健は直ちにバロンに搭乗、敵のフィンガーミサイルを受け流すとバロンパンチで反撃する。スフィンクサーが空中キックをミスし、自ら地中にめり込み身動きが取れなくなったところを、最後バロンはアームミサイルで止めを刺すのだった。
健・真理とメカロボの格闘シーンは、記念館外周の柱をつなぐプレート内外で撮影された。プレート内の地面は(撮影当時)コンクリートのタタキだったが、1986年の改修でタイル化された。一方、プレート外は(撮影当時)砂利が敷かれていたが、現在は土が露出している。
旧多摩聖蹟記念館(多摩市連光寺5-1-1 都立桜ヶ丘公園内)は、多摩市指定有形文化財の洋館。1880年代、明治天皇が連光寺に鮎釣りと兎狩りに訪れた縁から、1930年、宮内大臣経験者・田中光顕氏が行幸を記念して記念館を建設した。永年、財団法人多摩聖蹟記念会が管理・運営にあたってきたが、建物の老朽化により取り壊しが検討される。鉄筋コンクリート造り、両袖の付いた円形の大殿堂という、オーストリアのウィーン分離派とドイツのユーゲント・シュティールと呼ばれる建築デザインの影響が見られる昭和初期の稀有な近代建築物として高い評価を受け、保存の要望も強かったため、1986年6月に有形文化財として指定、多摩市が改修後に管理・運営することになった。緑豊かな都立桜ヶ丘公園のほぼ中央に位置するため、四季折々の植物・野鳥が観察できる。
現在、記念館は多摩市教育委員会が管理している。担当者の言によれば、「1986年に記念館が多摩市に有形文化財指定されて以降、文化財保護の観点から、記念館でのアクションシーン撮影は許可していない」という。
『愛の戦士レインボーマン』第5話に映り込む記念館の外壁に顕著だが、1972年の撮影当時には相当数の亀裂が確認でき、劣化はかなり進行していたと思われる(「こちら特撮情報局」内コンテンツ“特撮ロケ地巡り(第6回)”参照)。
熊野警部が潜んでいた辺りの植え込み。記念館ドーム入口から向かって右方向のプレート外に位置する。
前述のような事情から、旧多摩聖蹟記念館をロケ地とした作品は、1960年代〜1980年代前半制作作品に絞られる。(特撮ドラマに限定して見ていくと)映画「黄金バット」で千葉真一氏が演じる博士の研究所として使用されたのを皮切りに、『アクマイザー3』『イナズマン』『イナズマンF』『宇宙刑事ギャバン』『ザ・カゲスター』『仮面ライダー』シリーズ『人造人間キカイダー』『秘密戦隊ゴレンジャー』『猿の軍団』『好き!すき!!魔女先生』『超人バロム・1』『電人ザボーガー』『超神ビビューン』『七色仮面』『流星人間ゾーン』『ロボット刑事』など、枚挙に暇がない。『好き!すき!!魔女先生』では怪人クモンデスのアジトとして、また『超神ビビューン』では正義側のアジト・ダイマ超神研究所として、レギュラーで使用されている。
また記念館に隣接する都立桜ヶ丘公園内の丘では、『ウルトラマンメビウス』(第18話)で、主人公・ヒビノミライの変身シーンが撮影されている。

多摩市公式HP「旧多摩聖蹟記念館」
シュンケルの逃走ルート(手前から奥へ)。健がバロンを呼びながら疾走したルートは、シュンケルのそれと正反対だが場所は同一。記念館裏手にあたる。昭和初期の近代建築物らしい丸みを帯びたアンティークな窓枠とガラスが美しい。
<2014年10月19日追記>
『マッハバロン』第26話、KSS海底基地をほぼ制圧したはずのスーカン海軍参謀・モーゼル中尉・エルザ少尉。だが何故か3人は、一定時間を経る毎にKSS作戦室から忽然と姿を消す。村野博士と花倉刑事は、スーカンらのこの不自然な行動が、“中性子人間”としての機能を保つためのタイムアップ(弱点)であることを看破。直ちにスーカンらのアジトを探索するよう、岩井・白坂・嵐田陽の3隊員に命じる。しかし3隊員は、チャージを完了したスーカンらに拘束され、残された小杉姉弟・花倉の3名が手分けをして敵アジトを探る。
当該シーンで、小杉姉弟が探索していたのが“旧多摩聖蹟記念館”。バロンをゼッターキング2世から解放するため、キスバード3号搭乗時の捨て身攻撃で、頭部と脚部を負傷した姉の愛。それを甲斐甲斐しく支えながら敵アジト探索をフォローする弟・健一。二人が記念館を囲むアーチ型プレートの外側を歩きながら探索するシーンが、ワンカットだけ挿入されている。
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