お化けマンション跡
(現.能ヶ谷きつねくぼ緑地)
鶴川街道沿いの東側入口から、お化けマンションがあった“能ヶ谷きつねくぼ緑地”方面を望む。小田急線鶴川駅北口からならば徒歩で約16分だが、鶴川街道の傾斜は楽ではない。
“お化けマンション”跡レポート
レポーター◎「こちら特撮情報局」奥虹

『レッドバロン』第8話、元アラビアの石油採掘用ロボット・ベドウィンGが街中に現れた。大郷・哲也・大作はお化けマンションからベドウィンGに向け、バズーカ攻撃を行うが、敵はビクともしない。逆にベドウィンGの右手から発射された熱砂砲で反撃され、大郷たちは退却する他ない。追い詰められ焦る大作たちの前に、遂に救世主・レッドバロンが飛来した!
航空写真で“お化けマンション”を見ると、建物全体が“く”や“コ”のような形をしている。SSIメンバーが敵ロボを攻撃した位置は、マンションのほぼ中央部1階。敵の攻撃を避けるため、大作が隠れた位置も1階だが、外壁が構築される以前に工事が中断されたと思われ、劇中外壁が確認できない。鈴木清監督他スタッフ諸氏は、“お化けマンション”が極めて脆弱な建築物である認識は、お持ちでなかったと思われる。それでも発火装置を使うとなれば、おそらく事故回避のために、撮影位置として(直接建築物に触れない)1階通路部分を使用する現実的選択をされたのではなかろうか。日本現代企画作品に相応しく(?)、ガソリンと火薬をガッツリ含んだ、非常に高い火柱を発する装置ならば尚更だ。
東側入口を進み右折すると、近年園路整備で設置された階段が見える。この階段の位置は、かつての“お化けマンション”裏手中央の辺りだ
『レッドバロン』第24話、強敵・スカイシャークのアシッドファイヤーで溶かされたバロンの左腕は、矢沢博士が開発したニューバロニウムで補完される筈であった。しかしバロン修理中のロケット研究所を突き止めた神出鬼没なエンジェルキリーは、スカイシャークとともに襲撃を開始、研究所はとうとう瓦解する。

破壊されたロケット研究所の所員たちは、よろめきながら通路を避難する。近影である室内では、おそらく缶に入れた材木が派手に燃やされ、スカイシャークの破壊による火事を演出したと思われる。
逃げ遅れた所員たちを誘導しようとする哲也たち。通路と隣接する樹木の枝振りから推測するに、おそらく2〜4階での撮影か?
破壊されたロケット研究所へ駆けつけた健・真理・熊野警部の3人は、SSIの仲間たちや矢沢博士の名前を叫ぶ。近影に火の点いた材木2本をインサート。
息を切らしながら階段を駆け上がる健・真理・熊野(使用階数は不明)。
呆然とする真理に対し熊野は「レッドバロンさえ溶かす炎で研究所は焼かれたんだ。ひと溜りもない…」と絶望を滲ませる。通路と隣接する樹木の枝振りから推測するに、おそらく2〜4階での撮影か?
ロケット研究所の焼け跡を仰ぎ見る健。岡田洋介氏はマンション中央の正面(資材置場の位置)から上階を仰ぎ見ている。
SSIの仲間たちや研究所の所員たちが無事であった旨を伝える健の声に、真理と熊野は駆け出す。前述の材木を使用したシーンと同階で撮影されたと思われる。おそらく2〜4階での撮影か?
SSIメンバーたち・熊野・矢沢博士・研究所の所員2名が、研究所の焼け跡に集う。避難スペースのお陰で助かったことや、明日すぐにでもバロン修理が可能であることを喜び合う。マンション前空地の近影にリアルな瓦礫を設置し、スカイシャークの破壊を演出したと思われる。
“お化けマンション”の構造を“へ”の字に例え、向かって左側にあたる箇所。この歪曲した舗装路を進むと、やがて前述の新規設置階段へ接続する。
『マッハバロン』第10話、KSSエンジニアチーフである小田切ゆきおは、愛息・コウジをロボット帝国に誘拐されたうえ、完成を悲願する“ジャイアントバロン”設計図の一部までもタンツ陸軍参謀に奪われた。“お化けマンション”に呼び出された小田切チーフは、タンツから「コウジと設計図を返す代わりに、マッハバロンの操縦システムに支障をきたす細工をしろ」と命令される。

小田切チーフとタンツ陸軍参謀の密会シーン。愛息・コウジを誘拐された小田切は、タンツ陸軍参謀からある作戦を遂行するよう脅迫される。
スプリンゲルXに確保されたマッハバロン。操縦していた陽は、“お化けマンション”の通路を戦闘員たちに拘束されながら、コウジの幽閉場所まで移動する。
花倉刑事の通報により、小田切が“お化けマンション”に出没している事実を知った村野博士とKSSメンバーは、同所を張り込む。村野・岩井隊員・白坂隊員の位置は1階通路。
小田切がロボット帝国戦闘員に狙撃される現場を目撃する、村野・岩井・白坂の位置は1階通路。小田切・戦闘員の位置は3階通路。
KSS岩井・白坂隊員VSロボット帝国戦闘員らによる銃撃戦が開始される。開始時はマンション1階中央部。岩井たちは階段を駆け上がり、上階でも撃ち合いは続く。
KSSに救助された小田切は、同期の友人でもある村野に「毎日マッハバロンを整備していると(バロンが)美しい仏像のように見えてくるんだ。俺もこんなロボットを造ってみたかった」と、本心を吐露する。小田切は村野に支えられ、岩井・白坂に守られながら、“お化けマンション”表側に沿って歩く。
岩井隊員たちに助けられた嵐田陽とコウジは、“お化けマンション”の通路を走って逃げるが、マシンガンを携えた戦闘員に進路を塞がれて進退窮まる。その刹那、小田切が陽とコウジの盾となり撃たれる。直後に駆けつけた小杉愛隊員が拳銃で戦闘員を駆逐、絶体絶命の陽と小田切親子を間一髪で救った。
“お化けマンション”の構造を“へ”の字に例え、向かって中央にあたる箇所。後方に見える樹木の辺り、左右に伸びる形で建築物があった。
“お化けマンション”の構造を“へ”の字に例え、向かって右側にあたる箇所。右手奥にはベンチが、左手奥にはブランコが設置されている。
“お化けマンション”がロケ地として登場する『レッドバロン』第8・24話、『マッハバロン』第10話は、すべて鈴木清監督演出回だ。殊に『マッハバロン』第10話に於いては、大学で主席を争った後KSSで同志となった村野博士と小田切チーフが、片やKSSの理念を全うし、片や私的な欲望からロボット帝国に魂を売ってしまう…という両者の複雑な心情対比が描かれる、重要なロケ地である。
村野博士が差す傘に入り、KSSを裏切ったきっかけを訥々と吐露する小田切チーフ。それを2〜3歩下がった(村野と小田切のテリトリーを侵さない)位置から、見守るように無言で付いて歩く岩井隊員と白坂隊員。雨のなか、靄(もや)と緑に包まれながらマンション前の空地を歩く、4人の姿が美しい。小田切に降る“冷たい雨”が“村野に対する嫉妬やジャイアントバロンを建造したい欲望”の比喩、村野博士が差す“傘”が“KSSの裏切り者である小田切を赦し護る寛容”の比喩であると仮定すれば、鈴木清監督は意図的に雨天を狙って撮影したと思われる。
尚、村野博士を演じた団次郎(現.次朗)氏は、『少年探偵団(BD7)』(1975年/日本テレビ/日本現代企画)第4話で、怪人二十面相として“お化けマンション”に姿を現す。
かつてマンション前の空地(工事資材置場)だった位置から、マンション中央方向を望む。
約40年が経過して植生が完全に変化したため、ここに“お化けマンション”があったとは、にわかには想像し難い。
Wikipediaによれば、通称“お化けマンション”は、「1967年、地上6階・地下1階、計100部屋の分譲マンションを想定し、建築を開始。1968年には基礎工事が完了したが、その土地が許可を得ないまま造成されていたことが判明。そのため、土地の所有権をめぐって裁判となり、工事が中断されることになった。結審を経て1991年5月に取り壊された」とある。
『仮面ライダー』『好き!すき!!魔女先生』など1971年に放映された特撮作品を観ると、当該マンション前の空地は工事資材置場であったことが確認できる。故.長谷部安春監督が「1972年8〜9月に撮影した」とおっしゃっていた『ワイルド7』第2話劇中にも“お化けマンション”は登場するが、その頃には工事資材置場は丈のある雑草が繁茂し、地面が覆い尽くされている。よって劇中映像からも、1968年の工事中止から約4年が経過し、裁判途中で現場管理が完全に放置されたことが窺い知れる。現在その跡地は、園路が整備され“能ヶ谷きつねくぼ緑地”として町田市都市づくり部公園緑地課に管理されている。

中野龍人写真ギャラリー
中野龍人写真ギャラリー(ミラーサイト予定)
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※リンクのお許しをいただいた著作者の中野龍人様に心よりお礼申し上げます。
町田市HP「能ヶ谷きつねくぼ緑地」
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